体験談から
統合失調症を学ぶ
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更新日:2024年3月25日 公開日:2021年3月31日
当事者やピアサポーターの経験から得られることはたくさんあります。
そこで、統合失調症の当事者の皆さんにオンラインで集まってもらい、
統合失調症ならではの経験についてお話してもらいました。
どのように統合失調症を受け入れて、どのような生活を送っているのか、
生の声を聞いてみましょう。
参加メンバー
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永末拓さん(仮名) 40代障害福祉サービスのスタッフ。
引きこもりののち、激しい精神症状があらわれ統合失調症と診断された。再発予防のために心の栄養をとることを大事にしている。日々の楽しみは、大好きなコーヒーショップに行くこと。 -
上杉航平さん(仮名) 40代障害福祉サービスのスタッフ。
学生時代に精神状態の違和感を感じ受診し、統合失調症と診断された。規則正しい生活のために、日記やスケジュール管理を活用した。最近は歴史のポッドキャストにはまっている。 -
西尾裕樹さん(仮名) 50代障害福祉サービスのスタッフ。
引きこもりが続いていたときに、パニック発作が起こり入院し、統合失調症と診断された。職場経験を積むたびに、働ける自信が大きくなっている。妻と娘と過ごすのが憩いのとき。 -
松木綾音さん(仮名) 30代障害福祉サービスのスタッフ。
精神的につらい時期に家族に受診を勧められ、統合失調症と診断された。デイケアで仲間と出会えた経験から、人とのつながりを大切にしている。テーマパークに行くことが好き。 -
宮下 菫さん(仮名) 30代社会福祉法人のスタッフ。
身体の不調で総合病院を受診したところ、精神的な病気の可能性を指摘され、精神科を受診し統合失調症と診断された。気持ちの波の記録を始めてから、病気のパターンがわかるようになってきた。パイプオルガンを弾くのが好き。
トークテーマ一覧
統合失調症について、家族や周囲の方に
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永末さん
統合失調症の本や精神科の本を買って自分で読みました。それを家族にも見せて、「自分の病気ってこうみたいだよ」という感じで読んでもらったりしました。最終的には、あるがままを受け入れてもらえたと思います。
家族からは「ここにいてもいいんだよ」という居場所がある安心感や経済的な支えが欲しかったですね。
職場の人には、私の病気は少しコミュニケーションがとりづらいということを知ってもらいたかったです。知ってもらえていたら、もっと上手くコミュニケーションがとれたのかなと思うこともありました。 -
西尾さん
自分が精神疾患というのも自分でもあやふやで、周りも自分の病気についてよく分かっていなかったです。
引きこもりのときは、統合失調症なんて知らなかったし、もし周りの人がこういう病気があることをもう少し早く知っていて教えてくれていたら、もう少し早く引きこもりから脱出できていたかもしれないですね。 -
松木さん
母親は家族会に行ったり、病気についてかなり勉強してくれたみたいです。
周りの人にしてもらったことで良かったことになるんですが、デイケアで一人の大人として自分の責任を持たせてくれたことはすごく意味があったと思います。ほかにも、デイケアのスタッフや仲間といろいろな話ができて、病気の話だけではなく、夢とか希望とか、これからどうしていきたいか話ができたことはリカバリーにつながっていると思います。 -
上杉さん
自分がどのように感じるか、どんな不安があるかなどは、なるべく言葉で先生や周りに伝える努力をしました。言葉にすることが難しいときは少しずつでも、「こんな感じ」といろいろなパターンを試して伝えるようにしました。
親とは若いころにもう少し話せるような環境があれば良かったなと感じています。何かそういう相談できるところに早くつながったら話ができたのにと今は思います。 -
宮下さん
家族は理解するのにかなり試行錯誤していたと思います。家族は主治医の説明に納得できなかったのかもしれませんが、いろんな民間療法を調べては私に勧めていたので。
結婚後に入院を経験したのですが、そこで主治医から説明を受けて自分自身で病気を理解できるようになり、夫には「こういうことが起きるから、そんなときはこうしてね」と少しずつ伝えていきました。
周りの人が評論家にならないで、家族は家族、友人は友人、大学の先生は大学の先生、と病気になっても変わらずに接してくれてありがたいと感じました。今までの関係性と変わらずに話してくれたり、付き合ってくれたのが良かったのかなと思います。 -
医師
統合失調症の治療を続け、生活をしていくうえで、ご家族や周囲の人の理解を得ることはとても大切なことです。周囲の人の理解やサポートを得るうえで困ったことや悩みごとがあったら、主治医やデイケアのスタッフなどに相談してみましょう。あなたの気持ちを伝えるのを助けてくれますよ。
通院時に何か準備をしていることはありますか?
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宮下さん
毎日の気持ちの波をグラフにするようにしています。グラフの軸は-50から+150くらいまであって、-20から+20ぐらいを調子が良い基準にし、それより上だとちょっとテンションが高いとか、それよりも下だと気持ちが落ち込んでいるというふうに。短いコメント欄も設けていて、このグラフを診察のときに先生に見せながら、話しています。
グラフをつけだしてから、1年の中でどの時期に体調が悪くなりやすいのか分かるようになったと思います。 -
永末さん
治療を始めたころは何も準備せずに、診察してお薬をもらって帰ってくるだけでした。
精神科のデイケアに通うようになって、心理教育を受けて主治医への質問の仕方を学んでからは、「治る病気ですか」とか「いつまでお薬飲みますか」とか病気についての質問を事前に考えるようになりました。
携帯電話のメモ機能に箇条書きして、診察室でそれを見ながら、先生と話しています。
最近は、お薬の話をしたいなというときには、受診の前にインターネットで調べて、先生と話すようにしています。 -
松木さん
メモはとらないですが、デイケアの中で、お薬や病気のことを学んだりして、「このお薬を使ってみたいな」とか「私はこんなことを希望している」とかをスムーズに言えるようにまとめたりしていました。
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上杉さん
不安がくり返すときは、その周期をメモしたり、どういうことで不安になるか、自分はこういうことが不安なのだということをメモしておきます。
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西尾さん
特に準備していることはないです。いつも通りに自分の状態を伝えます。
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医師
診察は主治医との重要なコミュニケーションの場です。
皆さんが工夫しているように、前回の診察から今回の診察までにあった変化や日常生活での困りごと、うまくいくようになったことなど整理しておくのは大切なことです。忘れてしまわないように、紙に書いたり、携帯電話にメモしたりしておくことも良いでしょう。
前向きに治療に取り組む、
納得して治療を続けるために、
必要なことは何だと思いますか?
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西尾さん
「あなたは統合失調症です。こういう病気です。」というのを先生から説明してもらって、もやもやしていた気持ちが楽になりました。そして、病気なら治療すれば良くなると思うことができるようになって、治療に前向きになれました。なので、まずは病気を理解して、お薬で症状が良くなると自分でよく思うことがきっかけになると思います。
あとは、退院後に通ったデイケアで、同じ症状に苦しむ人とか、同じ病気の人とかにいっぱい知り合って、話し合う機会がありました。自分はこういうときにこういう自己対処しているとか、この病気はこういうものだよねと共感してもらえることが、すごく力になると思います。 -
上杉さん
今より状況は良くなるのだということを信じ続けることです。
病気でできなくなってしまったことがまたできるようになる、例えば働けるようになるとか、そういったことを信じることが大事だと思います。 -
永末さん
診察が一方的な問診で終わらないように、十分な説明が受けられる時間があると良いと思います。先生との対話を重視し、お互いの信頼関係を築いて、治療方針を決められれば良いと思います。
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松木さん
先生と話すときに、専門用語を使われたりすると、どういう意味だろうとか、自分は先生とちゃんと話せていないのではないかと不安になることがありました。私が分かる言葉で話してくれると、先生と一緒に治療ができていると感じられます。
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宮下さん
分かりやすい言葉で説明してもらえると安心感がありますね。それと治療のことを家族にも話してくれると、信頼感もありますし、みんなで治療をしているんだなと感じます。
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医師
治療の第一歩は、病気を受け入れることです。これは簡単なことではないかもしれませんが、主治医や医療スタッフ、同じ病気を抱える方とコミュニケーションをとることは、治療に取り組むうえでとても重要です。デイケアや当事者会への参加も良いでしょう。
お薬を忘れずに続けるために
工夫していることはありますか?
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永末さん
お薬のことは、自分の調子を整えるサプリメントのようなイメージを持つようにして、自分の中でお薬に抵抗がないようにしています。お薬は常に見えるようにしておいて、食事をするときには、必ずセットになるようにテーブルの上に出しています。お薬を飲みたくなくなるときもあるのですが、そのときには心の中で「薬、飲むぞ」「薬、飲むぞ」と何回も唱えながら、自己暗示をかけるようにしています。
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西尾さん
自分に合ったお薬の効果を実感することが一番だと思います。入院したときに処方されたお薬がすごく自分に合って、すごく楽になった経験があったおかげで、お薬をやめようとか飲み忘れることはあまりなかったです。
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永末さん
ある程度決まった時間にお薬を飲んで寝ることを心がけています。お薬を飲んで変化があったときや、合わないのではと感じたときは積極的に先生に相談しています。
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松木さん
先生と相談して自分の生活スタイルに合わせて、お薬を変えたり、量や回数を調整するようにしています。お薬のことを相談するには、飲めないことを先生に正直に言うのが一番かもしれません。先生に言える関係をつくることも大事になりますね。
また、忘れないように容器にお薬を入れて、テーブルの目につくところに置くようにしています。お薬を入れる容器をちょっと可愛くデコレーションしたりもしました。引き出しとかにしまっておくと、どうしても忘れがちになりますからね。 -
宮下さん
先生にしっかりとお薬のメリットとデメリットを説明してもらうようにして、副作用がひどいときは相談できるようにしてもらっています。効果があるのはもちろんですけど、副作用によって生活上困ることもあったりするので、副作用もしっかり知っておくと安心してお薬を続けられます。
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医師
お薬を目の届くところに置いておくことはとても良いことです。食事の時間に合わせるなど、服薬を生活の一部に取り込むことで忘れにくくなります。また、皆さんの仰る通り、ご自身に合ったお薬を主治医の先生と相談しながら見つけるということも大切です。お薬を続けるうえで困ったことがあれば、主治医の先生に相談してみましょう。
どのようにお薬やリハビリなどを続ける
モチベーションを保っていますか?
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松木さん
もともと引きこもり状態だったので、その生活に戻りたくない、という想いが大きいです。なので、今やりがいのある仕事にも就いて、当たり前の生活ができていることが、すごくモチベーションになっています。
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宮下さん
モチベーションを特に意識したことはないのですが、お薬の副作用がひどくないことが前提だと思います。リハビリは、デイケアとかに行ったわけではないのですが、パイプオルガンを弾きに外に出ることを1日のルーティンにしていましたね。私はパイプオルガンが好きで、自分の好きなことや自分に合った方法だったから続けられたんだと思います。
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西尾さん
本当に日を追うごとに、どんどん良くなっていって、できることがどんどん増えてくるのが、モチベーションになっています。
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永末さん
できることのメリットと、しないことのデメリットを比較しながらモチベーションを保っています。
働くことができる、好きなことができるというメリットと、好きなことができない、お薬を飲まないことで起こるデメリットの比較ですね。 -
上杉さん
健常者のスタッフと一緒に変わりない仕事をできているというのは、すごく自信になっていますし、それを続けられているのもお薬のおかげと思っています。ほかには、テレビとか本を読んだりしてモチベーションを高めています。
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医師
治療の組み立て方の1つに、できることを少しずつ増やしていくことがあります。回復を急ぎ過ぎてしまうとストレスになってしまいますが、できることが増えていくと自信につながります。また、目標を持つことが、治療に対するモチベーションを保つ秘訣かもしれませんね。
どのようなときに"回復している"ことを
感じられますか?
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上杉さん
働きだしたときは休んだりすることもあったので、仕事を休まず続けられるようになったときに回復しているなと感じます。
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西尾さん
ストレスがかかったときに、ご飯が食べられなくなるというのがあったのですが、ストレスがかかっても食事ができ、ストレスで症状が出る度合いも低くなったときです。
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松木さん
趣味とか化粧品とか洋服とかに興味が出るのは、回復している証しかと思います。ほかにも、毎日同じ時間に同じ場所に行って仕事をするのは、引きこもりのころからは考えられなかったので、これも大きなことだと思います。
あと、何かしたいなと思って、少し何か勇気を持ってやれば、できるようになったときとかですね。 -
永末さん
一人暮らしできるぐらいの給料がもらえるようになって、好きなものが買えたり、好きなことができたり、たまに遠出できるようになったことも回復しているのだなと思います。
また、自分の経験が、これからリカバリーしたいという人の助けになることが分かったときは、ほかの人に対しては希望を見いだすモデルになれているのだと思い、回復を実感します。 -
宮下さん
回復というか、調子が悪くないかも、と感じるのは、よく眠れてごはんが食べられるときですね。体調が悪いと、ごはんを作ることもできないので。
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医師
何かをできるようになった、続けられるようになったという経験は、大きな自信につながりますね。
症状が改善し、主体的に自立した生活を送ることを、"リカバリー"とまとめられています。皆さんの、できるようになり、続けられるようになり、自信を持てたという経験は、まさにリカバリーを表しているといえるでしょう。
復職や復学前にどのような準備をしましたか?
また、復職や復学にあたっての障壁やそれを克服した
エピソードがあれば教えてください。
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西尾さん
準備というよりは、実際に仕事の経験を積んで社会的マナーなどを身につけていきました。仕事が4年続いてかなり自信がついて、職を変えるごとに自信がついてきて、どんどんできるようになっていきました。
人間関係がすごく苦手だったのですが、働いていろいろな人と接するごとに、人間関係のコツみたいなものを学んでいけたような気がします。 -
宮下さん
身体の調子を整えたり、1人で外出できるように体力をつけたり、自分なりに日々の日課を考えて取り組んだりしていました。今日は料理をしようとか、その次は散歩に出かけてみようとか。散歩だったら、人混みを避けつつも、だんだん遠くの場所に行くことを目標にしていました。
復職のときに困ったことは、自分が希望する勤務頻度・時間が職場の求めるものと違ったことでした。結局は職場の求める時間で働くことになりましたが、その後の部署異動や周りの人の「無理しないでいいからね」の言葉で、無理せず働けるようになりました。 -
永末さん
働くことの基礎的な考え方を、本で勉強しました。履歴書の書き方とか面接の受け方を、デイケアやハローワークのスタッフに教えてもらい、実際に面接を受けました。基礎的な生活リズムを見つけるためにデイケアに週5日、2年半ぐらい通っていました。
はじめは障害をクローズして就職活動していたのでつらかったですが、障害をオープンにしたら気が楽になりました。オープンにしたことで、職場と1日の勤務時間や1週間の勤務回数など具体的な話ができるようになりました。 -
上杉さん
刺激があまりないようにというのを最初はすごく気をつけていて、なるべくゆっくりしようという感じでした。
退院して復学したら規則正しいリズムが崩れてしまい、具合が悪くなり、変わったことが不安になっていました。そこでちょっと考え方を変えて、学校に行ったときのパターンはこうしようなどと決めて、自分が納得できるリズムをつくるようにしました。 -
松木さん
今の仕事がはじめての就職でした。
就職する前には、デイケアでSST(ソーシャルスキルトレーニング)とか当事者研究、心理教育、外出プログラムをしていく中で、仲間ができたり、すごく楽しみながら準備ができたと思います。また、デイケアで役割をもらって、疑似就労体験的に少し働く練習のようなものを任せられたのも良かったと感じています。 -
医師
皆さんが仰る通り、病気に関わらず社会人として基本的なスキルを身につけることは必要ですね。加えて、「規則的な生活を送ること」「ストレスへの対処法を身につけておくこと」が大切です。自分に合った職場選びも大切ですので、主治医や医療スタッフに相談してみましょう。
復職や復学の際に、
職場の人や周りの人に病気について伝えましたか?
また、そのとき周りの人にお願いしたことなど
ありましたか?
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上杉さん
突然動きが固まったりとか、怖い気持ちになってしまったりとかがあったので、それは事前に伝えましたし、症状が出てしまったときにも伝えました。
周りの人には、頓服を飲ませて欲しいということと、あまりにも具合が悪いときは帰らせて欲しいということをお願いしました。 -
永末さん
自分の病気や症状の特徴を自分でよく理解をしたうえで、周りの人に伝えるようにしました。例えば、お薬を飲んでも不眠の日が年間何日かあったり、お薬を飲むためにアルコールを飲むタイミングとか量も調整しなければいけなかったりということです。また、お薬の作用・副作用もあるので、正しい知識を適切に伝えることが大切だと思います。
ストレスがかかると、思考にまとまりがなくなるときがあるので、何を話したいのか、先に周りの人たちに理解してもらうようにしています。 -
松木さん
今の仕事が初めて就いた仕事なので復職ではありませんが、就職する際は、ピアスタッフという職業のため、病気のことはオープンで働き始めました。
職場には、診察日やお薬のことは伝えていましたね。仕事に関しては、コミュニケーションなどが上手くいかないことがあるため、自分の得意なこと・苦手なことを伝えておきました。 -
西尾さん
40歳ちょっと過ぎまではずっとクローズで働いていました。クローズのときは本当に何かずっとやましいことを抱えているような感じで働いていました。
後にオープンで働くようになると、オープンのほうが気が楽でした。 「あっ、こんなに楽なのか」と思うぐらい、全然違います。
今はオープンで働いていて、健常者に近い働きができていると思うので、周りの人には特にお願いなどはしていません。 -
宮下さん
復職のときは、職場に病気のことを伝えましたが、十分な理解は得られなかったと感じました。勤務時間などを相談してもなかなか受け入れてもらえなかったりとか。
でも、部署異動があってからは、きついときなどは無理せずに相談させてもらえるようになりました。新しい部署はみんなが無理しすぎない環境があったのが良かったのだと思います。 -
医師
周囲の人に統合失調症であることを伝えるかどうか、多くの方が悩むことと思います。事前に病気のことを伝えておくことで、学校や職場で症状が現れたときに、周囲の理解やサポートは得られやすくなります。
自分の症状が出るパターンや対処法を理解し、相手に伝えておくと良いでしょう。
復職や復学後、
体調を崩してしまう等で壁にぶつかったとき、
どのようにしましたか?
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宮下さん
ちょっとした不調を感じるときは、職場で気持ちを切り替えるような工夫をしています。いろんな種類のアメとかお茶や紅茶、コーヒーだったりを気分で選んだり。
ちょっとつらいなというときには、身体を休めることが一番だと思っていて、仕事の時間を短くしたり、仕事に支障のない範囲でお休みをとったりするようにしています。 -
西尾さん
昔は体調が悪くなるとその場で仕事に行けなくなって、転々と仕事を変えていましたが、仕事を変えていくうちにどんどん経験が積めていったのか、嫌なことがあっても仕事を続けられるようになりました。
今はピアサポーターが周りに結構いるので、ピアサポーターに相談すると同じ気持ちを持っていたりとか、悩みを真剣に聞いたりしてくれるので、すごく助かっています。 -
松木さん
体調が悪くなったときには、頓服を飲んだり、職場の同僚や上司、同じ立場の仲間に相談したりしています。
あとは、休みの日に自分の好きなことをしてリフレッシュするようにしています。 -
永末さん
今の会社では、体調不良で休んだことはないのですが、有給休暇を上手に使って休みをとるようにはしています。
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上杉さん
睡眠をとるようにしていました。今でも具合が悪くはならなくても、疲れたらひたすら寝て回復するのが一番です。
夜の暇な時間に妄想めいたことを考えることが良くなかったので、考えないようにするためにも眠るようにしています。 -
医師
皆さん、それぞれの方法で対処しているようですね。
復職・復学後に体調を崩すのは、一般的にストレスが過度にかかっていると考えらえます。
そのため、仲間に相談したり、休息をとることが大切です。
再発を予防するために
気をつけていることがあれば教えてください。
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上杉さん
睡眠時間を6~7時間しっかり確保して、朝は決まった時間に早く起きるようにしています。ほかにも、食事は3食食べるといったように、規則正しい生活を心がけています。
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松木さん
診察に行って病気の経過を先生と話すことはもちろん、仕事のこととかは、ストレス発散というか、同僚や仲間に相談して、自分で抱え込まないようにしています。やっぱり話を聞いてくれる仲間の存在は大きいです。
疲れてくると被害妄想が出てしまうことがあるので、早めに寝たりして睡眠をとることも大事にしています。 -
宮下さん
毎日の気持ちの波を記録して、体調の変化のパターンが分かってきたので、体調が悪くなりやすい時期には仕事をセーブしたり、休息を意識して生活するようにしています。
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西尾さん
家族の力がかなり大きく、特に娘と接する時間があればあるほど、自分のストレスがなくなるのが分かるんです。だから、仕事が終わったらすぐに家に帰って、娘と遊んだり一緒にテレビを見たりする時間を長くとるようにしています。
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永末さん
定期的にお薬を服用すること、きちんと食事をすることです。そして何より、心の栄養ですね。余暇をしっかりと確保して、リフレッシュするのが大切です。
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医師
再発の主な原因は、ストレス、服薬中断、生活リズムの乱れといわれています。皆さん、この3つの原因に上手に対処できているようですね。対処法は人それぞれですので、当事者会の仲間やピアサポーターにどんな再発予防法を行っているのか聞いてみると、あなたに合った方法が見つかるかもしれませんね。
同じ病気を持つ方々に伝えたいと思うことを
教えてください。
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永末さん
こういう人になりたいとか、こうありたいと思うロールモデルが目の前にいることで人生は変わるんだと思います。ロールモデルに近づくために、何か1日1つでもいいのでやっていくのが近道になるかと思います。
働いている統合失調症の方を見たときに、自分にもできるのではないかという希望を持つことも大切です。自分の中に芽生えた希望を、アクセルをかけるばかりでは疲れ果ててしまうので、適宜ブレーキをかけバランスを保ちながら、希望に沿って生活をしていくことが大切です。 -
宮下さん
体調悪いなって思うときでも、状態によっていろいろと工夫できると良いのかなと思います。いくつか自分を助ける方法を持っておく、ということですね。
でも、体調が悪いと対処法を持っていても、使えなかったり自分で選択できなかったりすることがあったりします。そのときは家族とか主治医とか客観的に見てくれる人に「こんな方法があったよね」とかを言ってもらえるように、前もって共有しておくと良いと思います。 -
上杉さん
何でも継続することが大事です。近道はないけれど、夜早く寝るとか、お薬をしっかり飲むとか、小さなことでよくて、継続することが良くなる秘訣で、近道なんだと思います。
病気になりたてのころは、すぐに良くなってほしいとか、焦る気持ちはあると思います。その焦る気持ちはすごく分かるけれど、そこを何とか耐えて継続していくことで絶対に良くなると信じています。 -
西尾さん
引きこもりから始まって、一時はひどい時期もあったのですが、今は子どももいて妻もいて、友人にも恵まれてすごく幸せです。本当に将来、1年後、2年後は良くなると信じて、治療やリハビリをがんばってほしいと思います。
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松木さん
自分が引きこもっていたときには、今の生活は想像できませんでした。どん底の中で暗い道しかないなと思っていても、その人それぞれの何かのきっかけで光が差すことがあるのだと思います。なので、人とのつながりを大事にしてほしいことと、何かチャンスがきてどうしようかなと迷っているときは、チャレンジしてほしいと思います。
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医師
この「経験談を聞いてみよう」をのぞきに来てくださった方の中には、統合失調症という診断を受け、不安を抱えている方も多くいると思います。
今回、皆さんが教えてくださった経験は、同じ病気を持つ当事者の方々が、1人ひとりのリカバリーを目指すうえでヒントになり、背中を押してくれるものと思います。
【監修者】
北里大学医学部 精神科学 主任教授
稲田 健 先生
北里大学医学部を卒業後、精神科医として20年以上にわたり多くの統合失調症患者さんを診療してきました。また、日本精神神経学会の専門医・指導医、日本臨床精神神経薬理学会の専門医にも認定されています。精神疾患の当事者の皆さまが社会で自分らしく安心して暮らせることを目指して、特に精神科の薬物治療の研究に日々取り組んでいます。