統合失調症の治療

統合失調症の治療では、抗精神病薬による薬物療法や心理社会療法などを行い、
社会的機能の回復を目指します。

統合失調症の治療法

統合失調症治療の基本は、「薬物療法」、「休養・環境調整」、「心理社会療法」を行うことです。いずれの治療も、ストレスへの対応力を高め、当事者自身の回復する力を高めることにつながります。

統合失調症治療の3本の柱

専門医が答える
統合失調症 Q&A

心理社会療法とは、どんな治療をするのですか?

精神科におけるさまざまなリハビリテーションを行います。病気や治療について学ぶ心理教育や趣味活動から就労に近い作業を実際に行う作業療法、日常生活で必要なことをグループの中で実践する生活技能訓練(SST)などがあります。

嶋田聡志

統合失調症治療の目標

統合失調症の症状を改善し、心理社会療法やリハビリテーションなどを通じて社会機能を回復することが治療目標といえるでしょう。
一人ひとり症状は異なり、違うペースで回復に向かいます。回復しているか不安になることもあるかもしれませんが、たくさんの支援者と困りごとを共有しながら、治療を続けていきましょう。

統合失調症治療の目標と治療ステップ

統合失調症治療の目標と治療ステップ 統合失調症治療の目標と治療ステップ

薬物療法リハビリテーションを組み合わせた
包括的な治療により回復を目指します。

稲田健:臨床精神薬理., 16:743, 2013

SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)
という考え

SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)とは、治療方針を当事者あるいは医師だけが決めるのではなく、当事者と医師が対等な関係のもと一緒に決めていくプロセスのことです。
治療について少し考える必要はありますが、自身の納得できる治療方針は治療を続ける上で大切なことです。

SDMの進め方

当事者 医師(専門家)

治療内容の決定に“両者が”参加

治療の目標(ゴール)の共有

治療の目標(ゴール)の共有 治療の目標(ゴール)の共有

ゆっくり考える。
持ち帰って考える。

治療内容を決定

当事者
医師(専門家)

治療の中心は、医師ではなく、当事者のみなさんです。
あなたに合った治療内容を一緒に考えていきましょう。

嶋田聡志

統合失調症の薬物療法

統合失調症の基本となる治療は抗精神病薬による薬物療法です。
毎日お薬を続けることが大切です。お薬を続けることでゆっくりと回復が続き、できることが増えていきます。お薬をやめたり、減らしたりすると、再発の危険があります。お薬のことで何か気になることがあれば、主治医や医療スタッフに相談しましょう。

薬物療法

抗精神病薬の特徴と種類1)

抗精神病薬が統合失調症薬物療法の基本です。
抗精神病薬は、脳内の主にドパミンという神経伝達物質を調整し、統合失調症で困っている体験や症状を和らげる働きがあります。
抗精神病薬には、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の2種類があります。

定型抗精神病薬

《主な作用》
脳内のドパミンの量を調節することにより、陽性症状(幻覚や妄想など)への効果が期待できます。
《主な副作用》
パーキンソン症状のような手足の震えなど運動系の副作用(錐体外路系副作用)や眠気などがあらわれることがあります。

非定型抗精神病薬

《主な作用》
脳内のドパミンに加えて、セロトニンという神経伝達物質を調整することにより、陽性症状(幻覚や妄想など)に加えて、陰性症状(意欲の低下など)にも効果が期待できます。
《主な副作用》
パーキンソン症状のような手足の震えなど運動系の副作用(錐体外路系副作用)は、定型抗精神病薬よりも少ないですが、お薬によっては眠気や体重増加、代謝系の副作用があらわれることがあります。

1)功刀浩. 本人・家族に優しい統合失調症のお話, 初版, 翔泳社, 東京, p.57, 2018

お薬によって副作用の特徴が異なります。
お薬のことで何か気になることがあれば、
主治医や医療スタッフに相談しましょう。

嶋田聡志

抗精神病薬のカタチ(剤形)

抗精神病薬のカタチ(剤形)には、飲み薬のほかに貼り薬や注射剤があります。症状や当事者の好み、生活に合わせて剤形を選びます。

飲み薬

錠剤

お薬の使い方

  • 水とともに服用します

特徴

  • 多くの人が飲み慣れている、一般的なお薬のカタチです
  • 大きさや味が気になることもあります

錠剤

口腔内崩壊錠

お薬の使い方

  • 唾液や少量の水で、口の中で溶かして服用します

特徴

  • 水なしで服用できます
  • 味が気になることもあります

口腔内崩壊錠

舌下錠

お薬の使い方

  • 舌の下に入れて、飲み込まず置くことで口の中の粘膜からお薬の成分を吸収させる錠剤です

※服用後、一定時間は食べたり飲んだりすることはできません

特徴

  • 水なしで服用できます
  • 味が気になることもあります
  • 服用後、舌や口の中に違和感が出ることもあります

舌下錠

内用液

お薬の使い方

  • 使い切りの小袋に入った液状のお薬を服用します

特徴

  • 水なしで服用できます
  • 味が気になることもあります

内用液

貼り薬(テープ剤)

テープ剤

お薬の使い方

  • 皮膚に貼ります

特徴

  • 食事摂取と関係なく貼ることができます
  • 副作用が出た場合、はがすことで、お薬を止めることができます
  • 皮膚に赤みやかゆみなどが出ることがあります

テープ剤

注射剤

注射剤

お薬の使い方

  • 筋肉内または静脈内に注射します

特徴

  • 食事摂取と関係なく受けられます
  • 2~4週間に1回注射するタイプもあります
  • 痛みを感じたり、筋肉内注射の場合は注射した場所が固くなったりすることがあります

注射剤

抗精神病薬以外のお薬

抗精神病薬に加え、症状・目的に応じて補助治療薬が併用されることがあります。

抗精神病薬と併用される主な補助治療薬

薬の種類 特徴
抗パーキンソン薬 体のこわばる症状(パーキンソン症状)を改善します
睡眠薬 眠りに入りやすくなります
抗不安薬 不安やイライラを改善します
抗うつ薬 うつ状態を改善します
気分安定薬 気分の波を安定させます

専門医が答える
統合失調症 Q&A

今、たくさんの薬を飲んでいます。お薬を減らすことはできないのでしょうか?

統合失調症治療薬の基本は抗精神病薬です。飲んでいるお薬のうち抗精神病薬がいくつあるのか確認してみましょう。もし、抗精神病薬以外のお薬が多いようでしたら、一時的に多くなっている可能性もあります。良くなった症状、困っている症状と一緒に主治医に相談してみましょう。

嶋田聡志

統合失調症の非薬物療法

統合失調症の非薬物療法には心理社会療法や休養・環境調整などがあります。

心理社会療法

心理教育

病気や治療について学びながら、困っていることに対する方法を学びます。当事者を対象としたものと家族を対象としたものがあります。

作業療法

趣味活動から就労に近い作業まで、実際に手や身体を動かしながら、好きなことやできることを増やしていきます。作業を通じたやり取りの中で、コミュニケーションの力も身につけます。

生活技能訓練(SST)

人との関わり方や自分の気持ちの伝え方など、日常生活の中で自分が「できるようになりたい」と思うことをグループの中で実際に練習し、対処する力を高めます。

心理社会療法

休養・環境調整

急性期

ストレスの少ないゆっくりとした環境で過ごすようにします。
十分な睡眠と適切な栄養をとるようにします。

回復期

少しずつ運動も取り入れ、休養と活動のバランスを取ります。
規則正しい生活リズムを確立します。

監修:東京女子医科大学医学部精神神経科 准教授 稲田 健 先生