病気を受け入れて
いくこと
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更新日:2024年3月25日 公開日:2020年7月1日
病気を受け入れるまでに
葛藤があって当然です。
治療の第1歩は
病気を受け入れ、
向き合うことから始まります。
病期に応じて気をつけること
躁(そう)、うつの大波に翻弄されないためには、躁状態、軽躁状態、うつ状態、寛解期の各時期に合わせた心がけが重要です。
うつ状態のとき
うつ状態はとてもつらい状態です。薬を飲み続けながら、次のことを心がけましょう。
- ①無理をせず早めに休みをとる
- ②生活リズムを守る
- ③睡眠リズムを整える
うつが長引くと、出口のないトンネルに入り込んだように思えるかもしれませんが、必ず回復するときがきます。元気になろうとあせらずに、回復を目指しましょう。
躁状態・軽躁状態のとき
躁状態になったら、必ず受診して服薬を続けてください。軽躁状態の場合でも、しっかり治療しないと軽躁とうつを何度もくり返すことになってしまうので、困っていなくても治療をすることが必要です。
寛解期(症状が安定している)のとき
再発を防ぐためには、寛解期こそ薬の服用が大事であることを心に刻んで、毎日一定のリズムで過ごすことを心がけましょう。
また、家族や主治医と一緒に躁やうつになるときの予兆を確認しましょう。躁状態になると病気の認識もなくなります。取り返しのつかない事態を引き起こす前に、家族と躁の始まりに見られるサインについて認識を共有し、躁の対処を家族に託すことも重要です。
病気のこと、家族のことなど当事者だからこそわかり合えることもあります。患者会に参加してみることも良いでしょう。
専門医からの
ワンポイントレクチャー
どの病期においても治療を継続することがとても大切です。根気よく治療を続けていきましょう。
「薬をやめたい」と思ったら、自己判断でやめずに必ず主治医に相談するようにしましょう。
再発の予兆を見逃さないように
双極性障害はとても再発率の高い病気です。症状が落ち着いて安心していても、一夜にしてうつ状態になったり、急激な躁状態になったりすることもあります。
再発の予兆は、人によりさまざまです。症状が落ち着いたら家族と話し合って、再発の予兆は何かを一緒に確認しておきましょう。
こんな症状が見られたら、
早めに主治医に相談を
躁状態に多く見られるサイン
- 上機嫌でよくしゃべる
- 睡眠時間が短い
- 次々と買い物をする、金づかいが荒くなる
- イライラして怒りっぽくなる など
うつ状態に多く見られるサイン
- 食欲がなくなる
- 身だしなみにかまわなくなる
- 仕事の能力が落ちる
- 話をしなくなる など
専門医からの
ワンポイントレクチャー
事前に家族や周囲の人と再発の予兆は何かを一緒に確認しておくことで、対処法も考えることができます。また、再発の予兆を感じたらすぐに受診するようにしましょう。
ストレスへの対処法
ストレスは双極性障害の再発のきっかけになります。
ストレスをゼロにすることはできません。日々のストレスをコントロールして、ストレスを軽減させる対処法を身につけましょう。
- ストレスを予測する
- 人は予想外の出来事に遭遇するとストレスを感じますが、事前に予測できていると、ストレスを軽くすることができます。
- 考え方を工夫する
- 例えば仕事でミスをしたとき「自分は無能だ」と考えることもできますし「失敗したことでいい経験を積んだかもしれない」と考えることもできます。別な角度で物事を見る練習をしていきましょう。
- 100%を目指さない
- 「いい状態」とは、やる気があって前向きで、常に100%うまくいっている状態だと思っていませんか。でも完璧な人間はいませんし、すべてにおいてダメな人間もいないのです。少し肩の力を抜いて7割くらいを目指し「あとはなんとかなる」くらいの気持ちでいきましょう。
復職するときの心得
症状がおさまると一刻も早く仕事に復帰したくなるかもしれません。しかし、あわてずにしっかり準備を整えて復職するようにしましょう。
復職の時期や方法はケースバイケースで決まりはありません。主治医と相談しながら決めていきましょう。
- 躁状態から復職するとき
- 躁状態が残った状態で復職すれば再発の危険があり、トラブルを起こすリスクが高まります。気分安定薬や抗精神病薬で正常な気分になっていることを確認してから、復職を検討しましょう。
また、事前の準備も必要です。上司に再発前の徴候を伝え、再発が起きそうなときには家族に連絡してもらうなどの対応策を練っておく必要もあります。
躁状態からの復職は慎重に行いましょう。
- うつ状態から復職するとき
- 完全回復したあと、復職までに時間をかけすぎると、復職が難しくなることもあります。うつ状態からの復職は、短時間勤務から始めて少しずつ勤務時間を延ばしていきましょう。
専門医からの
ワンポイントレクチャー
仕事に復帰したからといって、張り切って頑張りすぎることがないように気をつけましょう。
特に急な躁状態になる躁転を引き起こすリスクがあるので、徹夜は避けるようにしましょう。
加藤忠史. これだけは知っておきたい双極性障害, 初版, 翔泳社, 東京, p.122, 2018より作成
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【監修者】
順天堂大学医学部精神医学講座 主任教授
加藤 忠史 先生
東京大学医学部を卒業後、滋賀医科大学、東京大学の精神科で診療・研究に従事し、その間、アイオワ大学でも研究に従事しました。理化学研究所で20年間、双極性障害の研究をしていましたが、2020年4月に、順天堂大学精神医学講座という臨床現場に戻りました。双極性障害と共に生きる人たちが、自分らしく人生を送れるようになることを願って、診療、研究に取り組んでいます。